
相続直前に銀行からお金を引き出しても相続税対策にはならない
「もしかしたら相続税がかかるかもしれないので・・・」
ということで相談に来られた方がいました。
亡くなった御主人は自宅以外にアパートを所有しており、相続税の基礎控除を少し超えてしまうかもしれないというコトでした。
不動産の評価額などを計算していくと、確かに少しだけ基礎控除を超えてしまいそうです。
不動産以外の財産はほとんどないというコトなので、銀行関係の残高証明書を見せてもらうと、口座残高はほとんどゼロの状態。
アパートの不動産収入があったはずですから「まさかゼロってことは無いだろう」と普通は考えますよね。
ご主人の預金通帳を拝見させていただくと・・・
ご主人が亡くなる2か月ほど前から毎日のように100万円近いお金が引き出されていました。
累計すると約3,000万円近いお金の引き出しがありました。
このことについて奥様に確認すると
「だって、預金通帳にお金が入っていると相続税がかかっちゃうでしょ?
だから引き出してタンスに入れてあるの」
というコト。
いやいや、タンス預金にしていても相続税はかかりますよ!
解決案
「銀行からお金を引き出して現金にしておけば相続税はかからない」
そのように思っていられる方が結構多いようです。
もちろん預金であろうと現金であろうと、同じ「相続財産」であることに違いはありません。
ですので、このようにお亡くなりになる直前に大量のお金を引き出しても、全く相続税の節税対策にはなりませんので注意が必要です。
むしろ財産隠しをしたと思われてもしょうがありませんので、タンス預金を財産にいれずに申告すると重加算税と言う罰金までかかってしまうことも考えられます。
アパートや年金などの一定の収入がある人のはずなのに、亡くなる直前に銀行残高がほとんど無くなっていれば税務署だって怪しいと思います。すぐにバレてしまいます!
今回のケースでは、相続税の対象になりそうな財産をチェックできたから良かったのですが、もし「うちは自宅だけだから相続税は関係ないわ」と思って何もチェックしていないと大変なことになってしまいます。
このようなケースの場合には、ちゃんとタンス預金の分も含めて相続税の申告を行います。
奥様は「相続税の配偶者の軽減」と言う特例を使うことにより、相続税の負担を最小限に抑えることができるのです。
もし、申告期限の後で税務署からの指摘でタンス預金が見つかった場合には、ペナルティとしてこの配偶者の軽減の特例を使うことが出来ません。税金を減らすためにせっせとやったことが、逆に税金を増やしてしまう結果になります。
今回の事例ではタンス預金も含めて正しく申告しましたが、相続税の負担も数万円程度で申告することができました。
「相続が起きたときはやっぱり専門家に相談すべきだわ」
この奥様もホッと胸を撫で下ろされていましたよ。
相続専門の税理士に相談することで、こういったコトも未然に防げるのですよ!